ギャンの価値ある28のルール

ウィリアム・ギャン
ウィリアム・ギャン(1878年-1955年)は、20世紀初頭に活躍した投資家です。ギャンファンなどのテクニカル分析方法を発明しましたが、ギャンの価値ある28のルール」の発案者として有名です。ギャンは自身の発見した法則とルールを厳格に守ることにより、生涯8割以上という勝率を誇り、現在価値に換算すると50億ドルを稼いだと言われています。
ギャン理論

ギャンは、綿花工場で綿花取引のノウハウを学んだことがきっかけで綿花先物取引を始めています。「ギャンの価値ある28のルール」は、証券やFXのトレーダーにも広く知られていますが、もともとは商品デリバティブを取引するために考案されたルールです。商品デリバティブが大阪取引所に移管されて、これから商品デリバティブを始めてみようという方には是非知っておいて頂きたい金言です。

ギャンの価値ある28のルール
①一度のトレードで資金の1/10以上損失が出るようなリスクは取らない。
一度に大きな損失を出してしまうと精神的にも資金的にも追い込まれます。例えば、資金の3割を失ってしまって冷静でいられる投資家は少ないでしょうし、資金を失ったことでトレードに使える資金も少なくなるわけですから、それまでと同じように稼ぐのが難しくなります。ギャンは一度の損失のリスクを10%以内に抑えるべきとしています。
②常にストップロス注文を置く。
常にストップロス注文を置くためには、建玉する前に損切りするポイントを決めておく必要があります。建玉してからストップロス注文をどこに置くかを考えるのでは遅いということです。
③資金配分を守り、過剰な売買をしない。
商品デリバティブ取引はレバレッジの効いた取引です。証拠金の何倍もの取引をしていることになります。このレバレッジ効果を生かすも殺すもトレーダー次第です。資金管理はしっかり行いましょう。
④利益を損失にしない。
買建玉に含み益が出てきたらストップロス注文の指値を損失のでない所まで引き上げます。(売建玉の場合は引き下げる。)会社によってはトレーリングストップ注文(トレール注文)がありますので積極的に利用しましょう。
⑤トレンドが分からない時は取引しない。トレンドに逆らった取引はしない。
相場にはトレンド相場とレンジ相場があるわけですが、ギャンはトレンド相場しか取引すべきでないとしています。レンジ相場での逆張りを禁止しています。
⑥迷ったら出る。迷ったら入らない。
確信が持てる時のみトレードを行うべきということです。チャンスを逃したくないというのは自然な心理ですが、相場のチャンスは待っていれば何度でも訪れます。相場で勝つためにはチャンスを待つ忍耐力が必要です。また、建玉をしている時も見通しが不透明になったら建玉を決済して取引を終了しましょう。
⑦活発な市場でのみ取引する。
活発な市場とは値動きのある銘柄のことを指します。相場にはレンジ相場とトレンド相場の時があり、値動きが停滞しているようなレンジ相場の銘柄は避けるべきとしています。一つの銘柄しかしないと決めてしまわずに、銘柄選びは値動きを見て柔軟に行うのが良いでしょう。
⑧違う市場間でリスクを均等に分散する。
1つの銘柄にリスクを集中するのではなく、2つか3つの異なった銘柄に分散投資すべきということです。分散投資といっても何銘柄もトレードするのではなく、1つの銘柄にリスクが集中するのを避けるためには、分散先の追加は1つか2つで良いとしています。
⑨指値注文はせず、成り行き注文で取引する。
ギャンのトレード手法はトレンドフォローですので、指値注文だと注文が約定せずに値段が動いてしまう可能性があります。強いトレンドの大きな値幅を狙うのであれば、成行注文で少しぐらい不利な値段で約定しても問題ないということでしょう。ただ、現在は24時間市場が開いていますので、深夜などは指値注文を有効的に利用した方が良いでしょう。この点はギャンの時代とは異なります。
⑩正当な理由がないのに手仕舞わない。
建玉に含み益があるとなんとなく利食いしたくなります。しかし、商品デリバティブ取引で勝つためには、強いトレンドに乗った時は伸ばせるだけ利益を伸ばすことが重要です。「損大利小」にならないためには利食いに関してもルールのもとで行うべきとしています。
⑪取引で儲けた余剰利益は別の口座に置く。
儲けた資金の一部を別口座で保管することで、緊急時やパニック時の備えとします。リターンよりもリスク回避に重点を置いた考え方と言えます。
⑫利益の薄い取引はしない。
ギャンはスキャルピングを禁止しています。しかし、今の時代はインターネットで簡単に低コストでトレードできますので、ギャンの時代とは少し異なるとおもいます。
⑬ナンピンはしない。
ナンピンはトレーダーが行う最大の間違いだとしています。株式投資であればナンピンで失敗しても塩漬けにしておけば助かるかもしれませんが、商品デリバティブ取引には納会(期限)があり回復するまで待つことができません。また、レバレッジ取引ですから証拠金不足となれば追加の資金が必要となります。
⑭忍耐無く市場から抜け出したり、待つのが不安だからといって市場に入ったりしない。
トレードには高い中毒性があります。感情に任せてトレードをしてはなりません。しっかりと自分のルールを守り自制してください。
⑮小さな利益と大きな損失を避ける。
商品相場では稀に強烈なトレンドが発生します。このようなトレンドに逆行してしまうと致命傷となる損失を被ることになります。一度の損で退場してしまうような大きな損失だけは回避しなければなりません。
⑯ストップロス注文を置いたらキャンセルしない。
ストップロス注文の値段に近づいても、取り消ししたり値段を変更してはなりません。なんのためのストップロス注文かわからなくなります。
⑰市場に頻繁に出入りすることは避ける。
日本にも「休むも相場」という格言があります。忍耐強くチャンスを待ってください。
⑱相場の両サイド(ロング、ショート)からお金を稼ぐことに意欲的であること。
個人投資家は買い建玉が多くなる傾向がありますが、下落トレンドの時は売り建玉で積極的に儲けましょう。
⑲価格が低いとか高いからと言って買ったり売ったりしない。
商品相場において「値ごろ感」での売買は厳禁です。これだけ上がったんだからそろそろ下がるだろう、これだけ下がったんだからそろそろ上がるだろうという「値ごろ感」は捨てましょう。価格が低い高いというのは売買の根拠とはなりません。
⑳ピラミッディングはレジスタンスを超えるか、サポートゾーンが壊された時のみ成されるべき。
ピラミッディングとは「買い増し・売り増し」のことです。買い建玉の買い増しはレジスタンス(抵抗線)を超えてから、売り建玉の売り増しはサポートゾーン(支持線)を割ってから行うべきとしています。「下がったら買う、上がったら売る」ではなく、「上がったら買う、下がったら売る」ということになります。トレンドがより明確になったタイミングでのみ建玉を増やすということです。
㉑ピラミッディングは強いトレンドが発生する銘柄のみで行う
買い増しは上昇トレンドが強い銘柄、売り増しは下降トレンドが強い銘柄を選んで行うこと。建玉を増やすということは、それだけリスクが高くなるということですから、強いトレンドが発生しにくい銘柄では建玉を増やすべきでないということです。
㉒両建ての禁止
両建てに合理的なメリットはありません。思惑と逆の方向に動いた時は「両建て」ではなく決済しましょう。建玉を決済して次のチャンスを待つのが正解です。含み損が大きくなった時に損切りするのは資金的にも精神的にも辛いことですが、「両建て」はその痛みを先送りにしているだけです。
㉓正当な理由が無い限り、ポジションを変えない。
取引をする時は一定のルールに従って、正当な理由で取引をする。その後はトレンドが変わる明確な兆候が無い限り決済をしない。
㉔大きく儲けた時は、トレードを縮小する。
大きく儲けた時は気持ちが大きくなりがちですが、調子にのって建玉を増やし過ぎるとそこに落とし穴があります。連戦連勝している時ほど警戒が必要です。
㉕天井や底を推測しようとしない。
天井だとおもって売ったら、そこから暴騰した。底だとおもって買ったら、そこから暴落した。投資家なら誰しも経験していることでしょう。「天井で売りたい、底で買いたい」というのは逆張りの発想です。トレンドフォローに徹して逆張りの発想は捨てよということです。
㉖他人の意見を盲目的に信じるな。自分で研究せよ
投資の情報はインターネットや書籍など世の中に溢れかえっています。しかし、その情報を鵜呑みにしてはいけません。情報を「自分で考える力」が必要です。
㉗損失後は取引を減らす。決して増やさない。
損をすれば取り返そうとするのが投資家の心理です。しかし、損をした直後というのは冷静にトレードするのが難しいです。損を取り戻すには「急がば回れ」です。取引を増やすのではなく取引を減らして時間をかけて取り戻すようにしましょう。損失はゆっくりトレードした方が取り戻しやすいです。
間違った建玉や手仕舞いの禁止
トレードはルール厳守です。ルールを破って建玉や決済するのはやめましょう。

ギャンの価値ある28のルールは、その大半が、「リスクを見据えた資金管理を行え」「トレンドに乗れ」のどちらかのことを言っているだけです。それほど商品デリバティブ取引においてこの2つは大切なことです。それは100年前も現代も同じなのではないかとおもいます。


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