原油先物取引を始める時の注意点

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により石油需要が大幅な落ち込みとなり、
4月17日のニューヨーク・マーカンタイル取引所の期近の5月物は1バレル18.27ドルという18年ぶり安値水準となりました。

NY原油(WTI)月足

NY原油月足

原油価格は新型コロナウイルスの影響を最も受ける金融商品の一つであり、大きく価格が変動しています。その値動きに注目して原油先物取引を始めてみようという投資家の方も多いとおもいますので、原油先物取引を始める際の注意点をご説明したいとおもいます。

WTIとドバイ原油

ニュースや新聞などで報道される原油価格は、ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で取引されているWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)という原油の種類になります。1バレル(約158.8リットル)の価格をドル建てで取引しています。
一方で国内の商品先物取引は、東京商品取引所(TOCOM)でドバイ原油という種類の原油を、1リットル当たりの価格を円建てで取引しています。

基本的には同じ原油ですから、似たような値動きをしますので原油の種類の違いについては気にする必要はないです。

中心限月の違いにご注意を!

海外市場と国内市場では中心限月(メインで取引される限月)がまったく違います。
海外市場は期近(期間が短い)取引がメインですが、国内市場では期先(期間が長い)取引がメインとなります。
平時であれば、原油は期近と期先の価格差があまりないのでサヤについて気にする必要はないのですが、現在は異常なほどサヤが開いていますので注意が必要です。

NY原油(WTI) 2020/04/17

2020/05(中心限月)18.27ドル
2020/0625.03ドル
2020/0729.42ドル
2020/0831.20ドル
2020/0932.08ドル
2020/1032.71ドル

ドバイ原油  2020/04/17

2020/0416,130円
2020/0519,670円
2020/0622,000円
2020/0723,430円
2020/0824,090円
2020/09(中心限月)25,070円

※NY原油5月限の納会日は4/21、ドバイ原油4月限の取引最終日は4/30になります。

原油コンタンゴ

期近(納会が近い取引)が安く、期先(納会が遠い取引)が高い状態です。

商品デリバティブ取引
綺麗な順ザヤ(コンタンゴ)ね
商品デリィバティブ
過去の原油のサヤ(4月限-9月限)と比べてみよう
過去のドバイ原油における4月限と9月限のサヤ

ドバイ原油 2016年 4月限/9月限サヤチャート

16年原油サヤチャート

ドバイ原油 2017年 4月限/9月限サヤチャート

17年原油サヤチャート

ドバイ原油 2018年 4月限/9月限サヤチャート

18年原油サヤチャート

ドバイ原油 2019年 4月限/9月限サヤチャート

19年原油サヤチャート

2019年は納会日に価格が大きく動いたために4,000円のサヤが開いていますが(納会日によるイレギュラーですので無視して良いです)、基本的には原油先物は期先と期近のサヤが発生しにくい銘柄になります。

商品デリバティブ取引
今は期近よりも期先の価格が10,000円近く高いから、例年にはない異常な順サヤだよね

商品デリバティブ限月についての説明はこちら

順サヤ(コンタンゴ)の理由

異常な順ザヤの理由は、新型コロナウイルスによる移動制限によって直近の原油需要が極端に少なくなっているからです。
原油の需要減に対応するためにOPECプラスが日量970万バレルの大幅減産を決定しましたが、原油需給のバランスを維持するには規模が不足していると言われています。

4月8日に米エネルギー情報局(EIA)が発表した週間統計によると、米原油在庫は1517万7000バレル増の4億8430万バレルとなり、増加幅が過去最大となりました。国際エネルギー機関(IEA)によると、世界の4月の石油需要は日量2900万バレル減となり、OPECによる減産幅では到底追いつかない状況となっています。

一方で、世界的なロックダウンにより欧州や米国では感染者数や死者数が減少傾向にあり、新型肺炎の流行の最悪期は脱したのではないかという見方が出てきています。
石油需要は4~6月期に大きく落ち込んだ後、今年後半にかけて需要は回復していくという期待感から、7月以降の期先の原油価格は期近に比べてかなり割高な状態となっています。

原油価格で歴史的な安値を付けているのは直近の価格(期近)だけであり、半年後に納会を迎えるような限月は32ドル前後までしか下げていないという点をご注意ください。

18ドル台で原油を買って、半年後に高くなって売るという取引はできません
商品先物取引には期限があり、10ドル台の安値を付けている原油というのは取引の期限があと数日という短い限月になります。10ドル台の安値で買ったとしても価格が上昇する前に期限を迎えてしまい取引を終了しないといけないことになります。

※30ドル台の原油を買って、半年後に50ドルになって売るということは可能です。
※原油CFDも限月が切り替わるごとに価格調整で資産価値は目減りします。

商品デリバティブ取引
国内の原油先物の期先を買うということは18ドルの原油を買ったつもりが、実際は32ドル相当の原油を買ったことになるのね
原油コンタンゴ

半年近く価格の上昇を待つことのできる限月は期間の短い限月に比べて割高です。しかし、数か月後の価格上昇の利益を狙うならば割高である期先の限月を買うことになります。

NY原油(10月限)

国内の原油先物を取引する際には、WTIの期近つなぎ足だけでなくWTI(10月限一代足)も同時に確認する方が良いです。国内のドバイ原油9月限は、こちらに連動します。

両建て
移動制限が長期化するようだと10月限も20ドル前半まで下落する可能性もあるってことだね
流動性の問題点

期近が安いのであれば期近を取引すれば良いのではないかと考える方もいらっしゃるとおもいますが、国内市場の5月限や6月限は流動性が低くお勧めできません。
取引が少ないので買気配と売気配が大きく乖離する可能性が高いです。決済したい時に現在の理論値から大きく離れた価格でしか決済できないというリスクがあります。

残念な話ですが、国内の商品先物市場は取引量が年々減少しており、流動性リスクが高まっています。取引を行う際にはしっかりと取引高を確認して取引する必要があります。

原油以外にも石油市場には、ガソリン、灯油、軽油などがありますが、流動性の問題からこれらの商品の取引も避けた方が良いでしょう。

東京商品取引所 2020年3⽉度取引⾼

 月間取引高1日平均取引高
ドバイ原油495,08523,575
ガソリン17,712843
灯油4,647221
軽油00
今後の原油相場について

欧州や米国は強力なロックダウンによって感染者数が一時的に減少していますが、ロックダウンを緩和すれば再度感染は拡大するでしょう。
感染の峠を超えた可能性はありますが、完全な終息にはかなりの時間がかかるとおもわれます。少なくとも年内は原油価格については下振れの可能性が高いのではないでしょうか。

商品デリバティブ取引
順ザヤの状況がしばらく継続するとおもいますので、ご注意ください。

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