レンジブレイクの意味

原油相場の歴史

2000年から現在までのNY原油(WTI)のチャートを見ながら商品先物取引のレンジブレイクがどういう意味を成すのかということ考えたいとおもいます。ここでは月足ベースでの期間の長いレンジを突破するということについて取り上げます。

NY原油月足

レンジ①
1997年から2000年初頭までOPECによる生産調整により1バレル20ドル前後で原油価格は安定していました。OPEC は理想原油価格を 1 バレル 22〜28ドルのゾーンとする「プライスバンド」制を設けてバスケット価格が 20営業日連続でこのレンジを上回った場合、または 10 営業日連続でこのレンジを下回った場合、OPEC 加盟国はその⽣産枠の割合で、自動的に日量 50 万バレルの増減産を⾏うこととしました。
【15ドル~40ドルのレンジ】


トレンド①
BRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)を中心とする新興国の経済発展により資源ブームが起こります。原油だけでなく白金、銅、アルミニウム、とうもろこし、大豆などあらゆるコモディティ価格が上昇しました。特に原油は40ドルのレンジを上抜けして以降、2008年に147.27ドルという史上最高値まで上昇します。


トレンド②
サブプライムローン問題をきっかけとするリーマンショックにより世界的な経済危機が起こります。世界経済の減速で原油需要が減るとの思惑から原油価格は33.2ドルまで暴落します。


レンジ②
FRBの量的緩和政策やECBや日銀のマイナス金利政策により世界経済は落ち着きを取り戻します。
【80ドル~110ドルのレンジ】


トレンド③
イランの核開発疑惑やシリアの政情不安など中東地域の地政学リスクの高まりから、100ドル前後で推移していた原油価格ですが、米国のシェール革命により需給のバランスが大きく変化します。シェール革命とは、今まで採掘が困難であったたシェール(頁岩)層から石油や天然ガスの採掘が可能になった技術革新のことです。これにより米国はサウジアラビアを抜き世界最大の原油生産国となりました。(2008 年の日量約 678 万バレルから 2016 年には日量約 1,235 万バレルまで増加)


レンジ③
シェール革命の需給バランスの変化により26.06ドルまで下げた原油価格ですが、シェールオイルは従来の原油に比べて生産コストが高く、原油価格下落によって採算ラインを割れるシェールオイル企業がでてきました。リグ稼働数が原油価格低迷の影響で2015年初から50%以上減少します。採算割れの採掘油井の閉鎖や新規採掘の停止によりシェール・オイルの生産量拡大はストップし、原油価格は50ドルから70ドルのレンジ内での動きとなりました。
【50ドル~70ドルのレンジ】


レンジ相場とトレンド相場の関係

このように原油は、世界経済の景気動向や需給バランスの構造的変化によって、レンジ相場とトレンド相場を繰り返しています。レンジ相場はその当時の適正価格なのですが、時代の変化により適正価格でなくなった時には「新しい適正価格」を探すためにトレンド相場に移行します。

2000年より以前は原油価格は20ドル~40ドルが適正価格だと多くの人が考えていたわけですが、新興国の需要増により需給バランスが大きく変化した結果、それまでのレンジは適正価格ではなくなりました。また、2015年には原油の最大消費国である米国がシェール革命により最大の生産国となり原油を輸出するようなったことで、今までのレンジが需給バランスに見合った適正価格ではなくなりました。

そして「いくらが適正価格なのか?」ということを見つけるために相場は上値や下値を試し行きました。どんどん限界を試して、誰も買わないぐらい高くなったところ、誰も売らなくなったところが価格の上限・下限となるわけです。この際に暴騰・暴落をするわけですが、それは新しい適正価格を見つけるためには必要な手順の一つなのです。

金相場について

国内の金価格は1990年~2000年初頭まで1,000円前後の価格で推移していました。その後、2003年に金ETFなど金の証券化商品が登場したあたりからレンジを上抜けしてトレンド相場へと移行しました。その後、2011年から国内価格は4,000円から5,000円というレンジ内での推移となっています。

東京金月足

今の金価格は、2013年2月7日につけた5,081円を上抜けして5,100円台での動きとなっています。月足ベースで見るとレンジを上抜けしたのか判断するにはまだ時期尚早という状況ではないでしょうか。

ただ、このまま上昇を続けるようであれば、今までの4,000円~5,000円の適正価格が時代にそぐわないということになります。そして「金の適正価格はいくらなのか?」ということを探るために上値を試しにいくというトレンド相場に突入します。

トレンド相場入りする可能性の背景

日本は、1999年2月にいわゆる「ゼロ金利政策」を実施し、超低金利が当たり前で金利が付かないことに違和感がないのですが、この超低金利状態がリーマンショック以降は世界的にも広がってきています。

米国(FRB)のFF金利はリーマンショック前の2007年には5.25%だったのですが、今回の利上げ局面は2.50%で頭打ちとなり、2019年7月に2.25%に引き下げられました。

この低金利・インフレ率の低位安定状態が続く中で、現代貨幣理論(MMT)までも真剣に議論されるようになっています。これまで当たり前だとおもっていた貨幣への信用が大きく変わることになるのかもしれません。

最高値を更新するにはそれなりの理由があるわけで、今月に最高値したという事実は重く受け止める必要があるとおもいます。何もなければ10年近くも続くレンジの高値を更新することなどありません。

「自国通貨を発行する政府は高インフレの懸念がないかぎり財政赤字を心配する必要はない」とする理論。自国通貨建ての債務であれば、政府は紙幣をいくらでも刷ることができるため赤字が増えても財政は破綻しないとされ、財政赤字を気にせず景気対策に専念すべきだと主張しています。

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